機関誌「花みずき」

死を前にしたがん患者の心の苦しみとその時何が支えとなるのか
~遺族アンケートを振り返って~


◇ スピリチュアルな苦しみを持ちながらも穏やかに過ごせるのか?
  遺族アンケートで、スピリチュアルな痛みが大きかった患者の家族30名に、死を前にしても精神的に穏やかに過ごせたかどうかなどの再アンケートをお願いしました。再アンケートは、30名中23名の回答を得ることができました。
 患者は死を前にしても精神的に“穏やかである”という認識があったかどうかについて、(1)穏やかであった 4名、(2)悩みや苦しみはあったが穏やかであった  13名、 (3)療養するうちに穏やかになっていった 4名の、合計21名で、穏やかであるという認識があった、が91%を占めていました。
 死を前にしても穏やかであった要因として考えられることで最も多かったのは、信頼できる他者との関係の支えがあることで大きな意味を持つ、支えです。また、在宅療養中は、自分で決める、選べる自由があったことも半数の方が、感じられていました。遺族アンケートの結果にもあったように、多くの人は何かしらの関係の支えを持つことがあります(家族、友人、人とは限らず大切に可愛がっているペット、信仰している神や仏等)。患者は苦しみを持ちながらも、健康なときには気づかなかった多くの支えに気づき、苦しみが残り続けたとしても穏やかに過ごすことができると考えられます。
  穏やかでなかった要因として、死への恐怖が大きかった方や、患者本人の希望と現実の開きが大きかった方がいました。


  「患者には悩みや苦しみを分かってくれる人がいましたか」では、死を前にしても穏やかであった、穏やかでなかった患者とも、全員「はい」と答えています。患者は苦しみを分かってくれる人がいるとうれしいという点からも、苦しみがあっても穏やかに過ごせる要因の1つではないかと思います。患者の悩みや苦しみを分かってくれる人として、家族が63%を占めており、その存在は大きいと考えます。
 在宅療養における家族の役割は、身体的介護や精神的ケアなど多岐にわたりますが、スピリチュアルな苦しみに対するケアの担い手としての家族の役割も重要であると思われます。
 ケアの1つに「人生を振り返る」ということがあります。患者本人が人生を振り返り、その意味を見出すことができます。在宅では、家族がその聞き手、引き出し役となることが多く、ともに人生を歩んできた家族が、一緒に患者の人生を振り返り、ともにその意味を見出し、思い出として残すことができます。

◇ 苦しむ人の前でわたしたちにできること
「傾聴」と「共にいること」
・ まずは、コミュニケーションをとること、特に話を真剣な態度で聞くことにある。
・ その人の考え方、つらいこと、うれしいことを把握していく。
・ 耳を傾けるとは受け取ること、聴くとはそれを拡大すること。自分の思いが強すぎると聞くことはできない。
・ よく聞いてもらえることで、気持ちが落ち着く、考えが落ち着く、生きる意欲がわくという効果がある。
・ 苦しんでいる人は、苦しんでいる自分のことをわかってくれる人、理解してくれる人がいるとうれしい。
相手の苦しみをキャッチする
 つらいこと、苦しいことは、希望と現実との開きがあることで、何気ない会話でも、このような視点を持つだけで、いかに多くの苦しみが含まれているかが見えてくるときがある。
相手の支えとなるものを把握し、支えを強められるような関わり
 支えとなるものはひとそれぞれ。頑張れと励ますこ
とや、きっと良くなりますよという安易な励ましは通じない。まずは、丁寧に相手の思いを聴いていくことが大切。