機関誌「花みずき」

もしも・・・あなたが、家族が認知症になったらどうする?

クリニック看護師 植松 昌美

 最近テレビ、新聞、雑誌等でも高齢者の孤独死や老老介護のすえ痛ましい事件などが取り上げられ、皆さんも目に耳にされることが多いと思います。
「認知症かもしれない」と気づいた瞬間から、本人はもとより家族の混乱が大きくなります。認知症による様々な症状(徘徊、幻覚、妄想、攻撃的行動など)により人格が変わり、介護する側もされる側も戸惑いはひとしおです。
今までは、年老いて「ぼけ老人」と言われながらも、家で家族に世話をしてもらい看取られてきました。しかし、核家族やひとり暮らしが増え、女性の役割や意識の変化、地域の結びつきも薄くなり、家族がすべてをになうことは難しく、高齢者の介護の仕方も変わってきました。現代は介護保険制度の導入により「介護の社会化」を目指す時代と言われています。
このような状況の中、どのように認知症に対処し、家族の介護負担を軽くしていけるのか?またひとりでも自分らしく暮らしていけるのか? 1月の健康教室でお話したことをまとめてみました。
認知症については、機関誌『花みずき』2007年№77新春号・同年№80秋号に詳しく掲載致しました。お持ちでしたら、こちらも参考にして下さい。

§ 認知症とは
 脳の障害がもとで認知機能(記憶する・判断する・思考する)が低下してくる脳の病気です。老化での物忘れは、「人の名前や物が思い出せない・何を取りに来たかわからない・朝食に何を食べたか思い出せない・もしかしたら認知症ではないかと自分で思う」など、記憶力の低下や体験したことの一部を忘れますが、日常生活には支障をきたしません。しかし認知症の物忘れは「まだ朝食を食べていない・どうやって帰ればよいのか・今まで使っていた電気製品が使えない・火の始末が出来ない」など、体験したことを丸ごとそっくり忘れて抜け落ちてしまい、判断力も低下し、日常生活に支障をきたすようになります。年齢に関係なく若い人にも見られますが、高齢になるほど起こりやすくなります。割合は60歳代で100人に1人程度、80歳を超えると4~5人に1人になると言われています。

§ 認知症を起こす病気は?
 脳の変性で起こる認知症(アルツハイマー型、レビー小体型、パーキンソン病、ピック病など)や脳血管性認知症(脳梗塞、脳出血性など)、ホルモン異常や肝障害(甲状腺機能低下症、ビタミンB12欠乏症、肝性脳症、低酸素症、透析脳症など)、感染性の病気(エイズ脳症、単純ヘルペス脳炎、脳梅毒など)、がん(脳腫瘍、転移性脳腫瘍)、外傷性の病気(外傷性脳挫傷、慢性硬膜下血腫など)その他(多発性硬化症、ベーチェット病、薬物中毒、アルコール中毒)があります。なかでも右図のように、アルツハイマー型認知症・レビー小体型認知症・脳血管性認知症が多くを占めます。

§ 認知症の症状は
◆ 中核症状(脳の異常による症状)
・記憶障害(記憶力低下)として、昔のことは覚えていますが、最近のことや少し前のことを忘れてしまいます。
・認知機能障害(ものごとを認識し判断する力の衰え)として、言葉が出ない「あれ、その…」と言ったり≪失語≫、今どこにいるのか?今何時ぐらいか?目の前の人が誰かわからなくなる≪失見当≫、「帰り道はどこかしら?」と近所で道に迷ったり≪失認≫、今まで使っていた物の使い方がわからない≪失行≫、目的にあった買い物が出来ない≪実行機能障害≫など判断力が低下します。
◆ 周辺症状(記憶障害や認知機能障害の結果として現れる症状)
≪妄想≫明らかに事実でない思い込みとして、「財布を盗ったでしょう」という、物盗られ妄想があります。
≪幻覚≫実在しないものが見える幻視や聞こえる幻聴があります。
≪せん妄≫意識障害と興奮および幻覚が夜間に多く見られます。
≪睡眠障害≫昼夜逆転したり、午前2時や3時に早朝覚醒します。
≪徘徊≫家の中はもちろん家の外も、ときには非常に遠くまで無目的に歩き回ります。
≪抑うつ状態≫気分の落ち込んだ様子。表情が乏しく、あまり動かず、しゃべらなくなります。
≪攻撃的な言動≫相手をひどい言葉で罵ったり、体力があるときは暴力をふるうこともあります。