機関誌「花みずき」

認知症グループホームの火災事故にどう対処しよう

院長 大頭 信義

◇ また高齢者施設での焼死の惨事が
 ご存知のように3月13日未明に、札幌市の認知症グループホーム「みらい とんでん」が全焼し、8人の入居者のうち7人が死亡するという痛ましい事故が発生しました。2008年1月に長崎県大村市のグループホーム「やすらぎの里」で7人死亡という火災事故や、グループホームではないが2009年3月群馬県渋川市「静養たまゆら」で10人が亡くなられた事故も皆さんの記憶に残っていることでしょう。

◇ グループホームの現状は

 介護保険がスタートしたのは2000年であるが、その頃から認知症の高齢者が生活するグループホームの数が急速に増えてきた。認知症の初期から中等度の段階までの生活の場として、グループホームの良さが広く認められてきたからである。グループホームはもともと、家庭的な雰囲気でお年寄りが生活できる場として設けられ、旧来の民家を改修して利用することも推奨されてきたため、小規模のところが多い。「みらい  とんでん」も1ユニット(定員9名)の小さな規模の施設であった。 

グループホームの良さは、「ゆったりとした時間の流れの中で」、高齢者が生活をするという点にある。基本的には、各自が何時に起きて、いつ食事をし、いつ入浴しようが自由である。できれば規律のある生活が望ましいので、多くの場合は9人で一緒に食事のテーブルにつくようにしている。しかし、今日は自室で食べたいとなればそれも結構である。そんなことで私も将来、認知症になれば、ぜひグループホームで暮らしたいと考えている。私の母親も認知症になって、グループホーム「花みずき」で4年半を暮らしてそこで亡くなった。その間に何度か、「2,3日、自宅へ帰ってみましょうか?」と声を掛けたが、いつも答えは「いや、私はここがいいのよ」ということであって、ついぞ帰宅しようとしなかった。息子としては、自宅での生活が具合悪かったのかなあと、苦笑するしかなかった。

◇ 課題となる「安全性」
 私はホスピス建設に次いで、16年くらい前から、認知症のためのグループホームが必要だと考えるに至って、自分でもその建設、運営をやろうと思い立った。市民の中から「姫路にグループホームを造る活き活き市民の会」を立ち上げて学習会を続けながら、姫路市に支援を要請した。当時は、「グループホーム?  そりゃ一体なんのこっちゃ」と市役所の中間のレベルで握りつぶされた。スタートは介護保険の開始まで待たざるをえなかった。
そのときに一番心配をしたのが、夜間の安全性であった。認知症の高齢者は「事故には対処できない」は、判りきったことであった。幾晩か考えて、「そうだ、これしかない」と思い当たったのが、複数のユニットを準備することだった。私は、4ユニットの建設を企画した。夜間、スタッフが各ユニットに1人であっても、4人居れば、火事の場合にも大いに役立つだろう。
私の提案の「4ユニット」は、介護保険開始時に、3ユニットに制限された。そして、その数年後、それは2ユニットへと制限は強化された。「収容人数が多いのは、もうけ主義に走る」というのが行政の見解である。

◇ 安全をどう実現するのか
1)出火を予防する設備に、行政が補助をしてやればいい。
 グループホームの運営は厳しい。「花みずき」でも9年目にしてやっと収支「0」となった。それまでは、クリニックから赤字を補填してきた。  消化器、自動火災報知器、消防への火災通報装置は、行政が設置ないしは補助してやればよい。
2)火事になれば、複数の救助者が必要である。
 認知症の高齢者は、緊急事態に対処出来ない。両手を引かないと歩けない方も多い。安全なところへ誘導しておいても、ふらふらとスタッフの後をついて回る。歩ける者は、火の回った自室へ帰ろうとする。しっかりと留め置く1名が絶対に必要である。
3)近所の住民の方の援助が必須である。
 私達は、2棟3ユニット(2階建て)の構造を持っている。火が出たとき、安全な場所へ誘導し、1人がそこに止まるように死守する。そして、近所の方々の支援を待つ。2ヶ月ごとに開催している運営推進委員会で近所の皆さんに支援をお願いしている。
4)それでも、不安は果てしない。
 とにかく入居者は、判断できない、自分では移動できない人が多いのである。現実の火災の場合にどこまで、助けることができるのか。グループホーム以外の高齢者施設でも事態は深刻であろう。

普通の民家で火事は頻発していて、いつも高齢者の焼死がニュースとなっているのだから。