だいとう循環器クリニック

花みずき


方言とわたし

クリニック看護師 延澤さん 


 「調子はどうですか?」「べっちょないで。でも動きとみのうてな。」こんな会話がクリニックの中で交わされる。すごく自然で心地よい言葉。播州地方ならではですよね。
 私は、方言が大好きです。暖かくて、親近感が持てます。何より標準語では表現しきれない言葉が方言にはあるように思うのです。それを知ることが楽しみであり、そして使いこなせた時、その土地に一歩近づけたように思います。私も、姫路に住み始めて2年が経ちました。主人が姫路出身ということもあり、播州弁はいつも耳にしていた方言なので、違和感無く聞き取れます。そして、私もちょっぴり使えるようになってきたのではないかなと思うのですが、どうでしょうか?
 以前、花みずきの自己紹介の欄で、“方言のバイリンガルになれるかも”と書きました。不思議と、転勤して前に住んでいた土地の言葉を何年も喋らなくても、話をすれば自然とその土地の言葉で喋っている自分に気づきます。からだにしみ込んでいるのかな。これが英語やフランス語にも通用したらどんなに良いだろうと思うのですが、残念ながら、それは無理な話ですね。

 そもそも、私の方言のベースは阿波弁です。生まれてから18年間は徳島で育ちました。阿波踊りの鐘の音が聞こえると、自然に血が騒ぐ生粋の徳島県人。徳島を離れるまでは、阿波弁と標準語の区別すらわかりませんでした。イントネーションは関西と同じ。阿波弁の特徴は、語尾に“けん”や“じょ”などの言葉がつきます。播州弁で言う“けー ”の部分ですね。“それ”とか“その”などの言葉は、“ほれ”とか“ほの”と“そ”が“ほ”
に置き換わっています。院長先生の話し方を聞いていると、時々阿波弁を思い出します。
 特徴的な阿波弁を2つ紹介します。1つ目は、“つまえる”と言う言葉。これは“片付ける”という意味です。子供のころ、部屋を散らかしては、“ちゃんとつまえなさい!”と親からよく言われた言葉でした。あまりに日常的な言葉だったので、標準語だと思っていたくらいです。ちなみに、関東方面では、“かたす”とか“なおす”と言う表現をしていました。これが私にとってとても新鮮な言葉に聞こえ、いつものごとく、知り得た言葉として使っていくうちに、いつの間にか “つまえる”は私の中で封印されていました。親から注意を受ける年でもなくなったためか、耳にすることもなくなっていましたが、ひょんなことで、クリニックの中で聞くことがあり、昔の記憶がよみがえってきました。久しぶりに再会したような感覚で、ちょっぴり興奮したひと時でした。

 もう1つは、“せこい”という言葉。決して“けち”という意味ではありません。胸が苦しかったり、心臓がドキドキした時などに使います。“階段上ってきたら胸がせこーなった”こんな風に使います。ちなみに静岡では、胸が苦しい時、“せつない”という表現をします。内科外来で勤務していた頃、患者さんから“胸がせつないんです”と言われ、“何か悲しい事でもあったの”と聞き返した事があります。標準語の意味と、方言の意味の違い。これって住んでみてわかっていく表現だなと思います。
徳島を離れて20年以上が過ぎ、違う土地で生活するほうが長くなってしまいました。讃岐弁、広島弁、横浜弁、静岡弁、いろいろな喋り方をしているうちに、故郷の方言はどこへ行ってしまったんだろうと思うこともありますが、逆に阿波弁を客観的に楽しむことができるようにもなりました。私の言葉は、カメレオンのように、行った先々で言葉を変化させていくのもいいかなと思っています。
これからは播州弁も追加して、ますますバージョンアップさせていこうと思っています。方言を真似するだけでなく、歴史や文化も勉強して、深みを持たせないといけないですね。
私が変な播州弁を使っても“ごうがわく”と言わないでくださいね。

 
| INDEX | BACK |
Top


だいとうクリニック