だいとう循環器クリニック

花みずき

ホスピス病棟を上手に利用する

院長 大頭 信義


  これまで日常生活では語ることをタブ一視されてきた「死」の問題が、「老いて、病をえて、死んでいく」という普通の人間の通常の人生行路を考える時の避けて通れないテーマとなってきました。
 ホスピスケアという活動は、進行したがん患者を中心に、終末期を迎えようとしている人々に対し、少しでも自分らしさを発揮することができるようにと支援する活動であって、全世界共通のホスピス活動の理念は「あなたがこの世を去るときまで、少しでも快適な状態の中で、あなた自身の意志と選択であなたの人生を生きることができるように、医療者だけでなく、さまざまな人々と力を合わせて応援します」というものです。

◇ 昨年5月に姫路に挺生
 昨年5月に、全国で24番目の施設として西播地方における初めてのホスピス病棟が聖マリア病院内に誕生しました。
 日常の診療活動では、進行したがん患者の療養の分野で、心のケアを大切にして、疼痛・苦痛の除去を優先する医療看護の新しい姿勢を明確に打ち出した診療体制を実現して頂きました。
 また、市民が自由に参加できる症例検討会を開催して頂いていることもおおいに私たちを勇気づけるものです。これは、終末期の療養生活を送った患者の足跡をたどって、私たちがその経験を共有し、現在の医療体制の問題点を学ぶものであって、おそらく、全国でも初めての試みであろうと思われます。最近では、病院からだけでなく一般市民からの自分の家族の療養の経過紹介が行われるようになってきたのも特記すべき事項だと思います。

◇ ボランティアが参加
 播磨ホスピス・在宅ケア研究会では、ホスピス活動の開始にあわせて、ボランティアグル−プ「ひだまり」を発足させて、学習の機会を数多く持ってきました。それは、人の終末期や死の迎え方に対しては、これまでのように医療の専門家や、宗教者にまかせておくことなく、市民がその療養内容にも意見を述べ、参加して頂くのが重要だと考えているからです。 「ひだまり」の会員たちは、日常的なお茶のサ―ビスや草花 の世話、また季節の折々の行事に参加して、ホスピスケア活動を支えてきました。昨年12月からは、在宅療養を選んでいるがん患者の支援のために、家庭に出かけていって、家事、食事、買い物、掃除、子供のケァなどで目を見張るような活動を展開しています。

在宅療養ののち亡くなった数◇ 療養の選択肢が拡がった
 従来は、進行したがん患者の療養といえば、手術を受けた専門医療機関かあるいはそこから紹介されて、もう少し身近な医療機関での入院生活が中心でした。病院への集中の程度は、平成5年の厚生省の統計のなかでの「がん患者の、在宅での死亡の割合はわずかに6.4%」という数字が如実に物語っています。
 しかし、近年になってこの図式が変わろうとしています。がん患者の希望しだいでは、病院、在宅、施設ホスピスという3者の中から、療養の場所を選べるようになりつつあります。自分の病状に合わせて、また家族の事情から考えて、あるいはしばらく試してみてその後好みに合わせてということさえ可能となりつつあります。


◇ 在宅ホスピスケアが増えてきた  

 がんの部位(図-1)は、私たちのクリニックでの、在宅ホスピスケアにて亡くなられた患者さんの数をグラフ化したものです。進行したがんのケ一スですので、残念なことですが、ある期間の経過ののちには亡くなられてしまいます。このグラフの数字は、在宅療養を経て施設に入院されて死亡された方も含まれています。年とともに、がん患者の数が増え、今年97年は4月末の統計ですでに7名を数えます。
 (図―2)は、どこからがんが始まったのかを示しています。44名のなか、肺がんが最も多く12名、次いで、胃がん、大腸がんとなっています。この上位の順番は、日本でのがん死亡の順位と同じであって、それは、どんながんでもとりわけて在宅療養に不向きということはなさそうだと言えましょう。




最期の療養場所

◇ マリア・ホスピス病棟の利用も増えた
   (図−3)には、在宅療養を始めた44名の方が最終的にはどの場所を選んだかを提示しました。在宅療養を選ばれた患者やその家族は、当初、押しつぶされそうな不安と闘いながらも、自分の療養の道として「在宅」を選択されたに違いありません。しかし、様々な事情から、当初の方針を変更せざるを得なくなることも起こってきます。
 その結果としては、「最期まで在宅」は、31名(70%)、「病院」が7名(16%)、「マリア・ホスピス」を選んだ方が6名(14%)となりました。
 最期まで在宅で療養される道を選択した患者が70%にも達していて、その「在宅での療養」への思いがとても重いものであることに、その医療を担当する者として襟を正さねばならないと考えています。
 またもうひとつ目立つのは、まだホスピス病棟はその活動を開始して1年を経過したばかりですのに、私たちのクリニックからだけでも6名の方が入院し、そのケァを受けながら旅立って行かれたという点です。 「病院」は平成2年から8年4か月の長い経過のなかで7名ですから、在宅ではどうしても療養困難となって選ぶ場所としてどんなにかホスピス病棟が期待されているかが明らかだと言えましよう。

◇ 施設への入院になるのは「介護力不足」が多い
   図−3の下側には、ホスピス病棟や病院へ「入院」することとなった13名の「理由」を記しています。呼吸障害や痛みといった症状のコントロールが難しくなったのではなくて、家庭内での介護力の不足が抜き出ています。実は、がんでの在宅療養の期間は平均2か月と短期なのですが、それでも家庭内で支えることが出来ない例にもしばしば遭遇します。これが、療養が数年に及ぶ「がん以外」の疾恵の場合には家族への負担が、極めて大きくなることも推察できましょう。
 これからも、病院、在宅、ホスピス病棟の特質をよく知って、自分の状況にあった療養の場所や方法を考えていくことが賢明です。いつでも、クリニックに相談していただきたいものです。


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