患者が主人公

在宅ホスピスケア 死の看取りのために

「グリーフケアについて 」

ひまわりの会 代表 中村 寿子

■悲嘆は死別による喪失から生じる深い心の苦しみである。悲嘆のプロセスに要する期間は、配偶者の場合で1〜2年、子供の死の場合は2 〜5年といわれているが、大幅な個人差がある。
■悲嘆のプロセスの重要なところは、「必ず苦しみを伴う」ということである。その苦しみは、死別者の人間的成長や自立を促進する貴重な経験になる。
■死別体験者が抱える問題について、最もよく理解し助けとなるのは、 別の死別体験者である。ひまわりの会は身近な人を亡くした人達の、 グリーフケアを目的とした自助グループである。
■月1回の例会を開き、個人は、参加したいときにやって来て、やめたくなったらいつでもやめられる。
■例会では素直に感情表現、自分の気持ちを肯定してもらえる場所であることを大切にしている。自助グループのなかでサポート役として活動することは助けを求める人に大変役に立ち、またサポートすること自体が支援を受けることと同じくらいその人の立ち直りに効果がある。
■自助グループは病的悲嘆を防止し、また病的悲嘆からのすみやかな回復に役立つ。


悲嘆
 悲嘆(grief)とは、私達がある人と「結んでいた」を放し、離別することに伴う現象です。それは、 死による喪失から生じる深い心の苦しみです。愛するを失ったとき、遺族は恐ろしいほどの情緒的苦痛を体験します。
 死別はあたかも、その人の精神生活から何かがねじ り取られるかのような経験です。亡くなった人との絆 が強ければ強いほど悲嘆は強度になります。配偶者との死別は強い悲嘆をもたらし子供との死別はさらに強力な悲嘆の嵐をよび起こします。親が亡くなるときには過去を失い、配偶者が亡くなるときには現在を失い、子供が亡くなるときには未来を失うといわれてい ます。

悲嘆のプロセス  
  悲嘆のプロセスにおいては、はかりしれないほどの身体的かつ情緒的エネルギーが必要になります。長年寄り添った人の消えた生活に順応することは、時間のかかる大きな仕事です。悲嘆のプロセスは、肉親との依存関係を絶たれた個人に心理的、社会的自立を促します。
  悲嘆のプロセスに要する期間は、配偶者の場合で1 〜2年、子供の死の場合は2〜5年といわれていますが、大幅な個人差があります。下の四つの過程をほとんどすべての死別者が体験します。
1)喪失の現実を受け入れる。
2)悲嘆を苦痛なものとして受け入れる。悲嘆のプロセ スの重要なところは、「必ず苦しみを伴う」という ことです。苦しんでいるときはその苦しみから何とか解放されたいと誰でも思います。しかし、その苦 しみは、死別者の人間的成長や自立を結果的に促進する貴重な経験になります。苦しみ方、死別に伴う悲嘆の作業(griefwork)には―定のパターンがあるわけではなく、それぞれの人にとって固有なものです。
3)死者との関連なしに、変化した環境に適応する。
4)死者に注いでいた多量のエネルギーを新たな関係に向け変える。

悲嘆のケア
  私達は生きていくうえでさまざまな別れを経験します。そのなかでも愛する人を亡くすという経験は、自分自身の死と同じくらい大きな試練であり、人生のなかで最もストレスが強く、心の痛みを伴う辛く悲しい経験です。愛する人を失った人々は、「あのときこう していたら救えたのではないか」と自分をしばしば責 めます。遺族は、悲しさ、辛さ、怒りなどの感情を周囲の人に理解してもらえず、出口のみえない孤独の世界に閉じこもり、なかなか立ち直ることができません。
  日本では阪神・淡路大震災のあと、ようやく「心の ケア」の必要性が語られるようになりましたが、遺族 に対するケアはほとんどされていないのが現状です。 欧米の病院や地域では、悲しみのうちにある人を暖かい共感をもって包み、慰め癒すピリープメントやグリーフケア(griefcare)とよばれる活動が発達してい ます。しかし、日本では悲しみに沈んでいると「いつまでめそめそしているのか、早く元気を出せ」と叱咤され、気分を変えようと明るく振る舞えば、「・・・が亡くなって間がないのに、以前より元気そう」と井戸端会議の材料になります。

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